僕は人の気持ちを考えたことがないみたいだ。

それに最近気がついた。

廊下を過ぎてゆく人達。
壁の向こうから聞こえる中傷。

弱い草食動物は他人をけなして群れをなす。

例えば僕とかの事とか。

強い相手が怖いんだ。

しかし、他人が別の人をけなしている時、その人はどうしているんだろう。
僕にはそれは褒め言葉だが、草壁にああ言わせておいていいんですか、と言われて初めて気がついた。

ちょっと廊下に出てみる。

歩いて教室のある方へ足を向けると生徒達が蜘蛛の子のように散ってゆく。

ヒバリだ

逃げろ

殺される

きゃー


僕は心に蓋をする。
すると、啜り泣きが聞こえた。
僅かながら。

向こうの教室か?

…いや、いない。
でも近いのは確か。

だとすると。

「女子トイレに居る君、もうすぐ授業が始まるよ」

鳴咽は止まらなかった。
僕…無視された。

…へぇ。
咬 み 殺 す 。

僕は女子トイレの入口を蹴り、中に入る。
鳴咽が一瞬止まる。
でも、もう遅い。

奥から二番目にいる。
僕は思いっきりドアを蹴った。

すると女子が驚いた目でこっちを見据えた。
頬を伝う涙。

「君、僕に逆らうなんていい根性しているね」
『殺して下さい』

突発的に投げられた無機質な声。

「群れ以外は殺らない趣味でね」

そういうと彼女は虚ろな目で『死にたい』と呟いた。

僕を無視し、脇を通り過ぎる。
「待ちなよ」

彼女はびくっと震えた。

「なんで泣いているのかい?」

風紀を乱す奴は根元から絶やす。
そんな僕の胸に君は飛び込んできた。

しゃくりあげる彼女。

僕はどうしたらいいかわからなくなって、ぎこちなく彼女の背中をさすった。

これが、傷つくという感情。

僕は彼女を抱きしめて「大丈夫だよ」と言った。

僕は君の味方だから。

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