桜addition
君は僕の日課の一つになっていた程だ。
出来るだけ気の弱い小動物のふりをして改札でいつもすれ違う君は次のマダムにすれ違う時にはその隠していた爪を大きく奮う、
かのように、
一瞬、
きらびやかな、
財布が、
彼女の手で、
舞う。
ワオ。
眼が獲物を狩るそれに刹那変わる。
僕は君にはスられた事はない。
きっと僕のような学生には興味はないんだろう。
どうせ、君のカモみたいに財布なんて重くないから。
そう冷めた考えが頭の中で過ぎた。
こう、最初は別になんとも思わなかったけれど、
こうも毎日だと罪悪感が芽生えて、
目を閉じると、
行動を起こす前のはかなげな君の今にも泣きそうな姿。
毎日がこう過ぎてゆく。
汚いものは記憶の奥底にしまって、
それでいいの?
気がつけば僕は走っていて。
そう、
僕の手が求めているのは君。
正義感じゃない。
ただ君が僕に無言の助けを求めたから。
だから。
目の前には泣きじゃくる君。
財布を鞄から取出し、今にも壊れそうな君。
はかとなく桜を思い出した。
君の沢山の傷付いた心の骸が積み重なり、大樹を造りあげた。
君の頬を光らせる涙を口で吸ってやる。
『警察に連れていかないの…?』
そう上目使いで震えて言う君をとても愛おしく感じた。
大丈夫だよ。
その弱い心も此処で終わりを告げる。
君は傷付き過ぎた。
重なった大量の君の骸は大樹をなし、花を咲かせる。
それは僕たちの始まりを祝して。
ほら、春が来たよ。
「君の事好きなんだ、だからこれ以上自分を傷つけないでくれる?
自分に正直になってさ」
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